2011/12/26

ギニア 資源開発に沸く国

注目されるギニアの鉱脈
ギニアは西アフリカの大西洋沿いに位置する人口1000万人の共和国で、主な輸出品目はボーキサイト、アルミナ、金などの鉱物資源だ。「鉱業がくしゃみをすると経済が風邪を引く」といわれるほど、この国の経済における鉱物資源の重要性は高い。最近特に注目を浴びているのが鉄鉱石だ。鉄鉱石の需要は過去10年間で飛躍的に増加した。安定した供給を確保するために、世界の企業が、これまで手付かずだったギニアをはじめとする西アフリカの鉄鉱石鉱脈に目をつけ始めたのだ。これらの鉱脈は埋蔵量が250億から500億トンといわれ、しかもその大部分が鉄分65%という「優良」鉱脈だ。2010年に入ってからわずか半年で3つの大型プロジェクトが発表されており、その投資総額はおよそ82億ドル[1]、ギニアのGDP(44億ドル)2倍近くに及ぶ。
これらの大型投資をギニア政府は歓迎している。これまでギニアは「半世紀以上250億トンの鉄鉱石の上に居座っていながら利益を得ることがなかった[2]」が、外資による開発で、鉱業分野で年間5億ドル―日本の対ギニア援助額[3]40倍以上―の利益を出すことを見込んでいる。

「開発者」としての企業の役割
ギニア、そしてアフリカにおける資源開発の特徴のひとつは、地下資源の採掘に当たる企業が、道路・鉄道・発電所など周辺のインフラ整備を担うという点だ[4]。これは鉱脈のある場所が奥地のため、まずは交通手段と電力を確保しなければならないという理由もあるが、インフラ整備や地域住民の雇用がその国での採掘許可を得るための条件になっている場合も多い。地下資源を持つアフリカ諸国の政府は、資源を掘って自分たちの利益を上げたらさっさと引き上げてしまう企業ではなく、その地域コミュニティの開発に貢献する企業を求めている。企業側もそれをCSR(企業の社会的責任)の一部として位置づけるようになってきた[5]

資源依存からの脱却
原油や鉱産物などの地下資源が豊富だからといって、その国が豊かになれるとは限らない。第一に、資源はいつか枯渇するものだし、輸出を資源だけに頼れば、その価格変動によって経済全体が左右されてしまう。第二に、地下資源に依存する国では、鉱業以外の産業が育ちにくいというジレンマがある。資源輸出がその国の通貨価値を引き上げ、農産物など他の輸出の妨げとなるためだ。さらには、ギニアの隣国シエラレオネの「ブラッド・ダイヤモンド」のように、資源が政情不安をあおることさえある。
現在ギニアでは鉱産物、特にボーキサイトが総輸出の7割以上を占めており、今後鉄鉱石の開発が進めば、鉱業分野の比重はますます高くなる可能性がある。20109月、ギニアでは初めての民主主義的選挙によって大統領が選出される。ギニアの新しい指導者たちは、資源で得た利益を国の発展のために再投資し、資源依存から脱却できるだろうか。手腕が試される。


【出典・参考資料】
  • 外務省ウェブサイト(ギニア共和国) http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/guinea/index.html
  • Jeune Afrique(アフリカ各国のニュース・仏語)  http://www.jeuneafrique.com/
  • CIA World Fact Book(各国の一般情報・英語)  https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/
  • 平野克己「資源の呪いか、開発の始まりか」NIRA政策レビュー33号 www.nira.or.jp/pdf/review33.pdf
  • 野村総合研究所「アフリカ新興国の資源開発と公的支援」 http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/toshi/trade_insurance/pdf/itaku/20Africa-shinkoukoku.pdf
  • LE BEC, Christophe. Arrivé choc de Vale dans le fer guinéen. Jeune Afrique, 2010, #2574, p.68.
  • LE BEC, Christophe. Fer : la ruée vers l’Ouest africain. Jeune Afrique, 2010, #2586, p.66-67.



[1] シマンドゥ鉱山開発にはリオティント()&中国アルミが29億ドル、ヴァーレ()BSGR25億ドル、カルヤ鉱山開発にはベルゾーン()&中国国際基金が28億ドルを出資すると発表した。Jeune Afriqueより。
[2] ティアム鉱業大臣のコメント。Jeune Afriqueより。
[3] 2007年度の実績では0.12億ドル。外務省HPより。
[4] 1の例でも明らかなように、インフラ整備の費用は莫大で企業一社が背負うには負担が大きい。中国は国営企業・政府の資金を使って積極的に資源獲得に乗り出している。
[5] 日本企業の例としては、三菱商事が関わっているモザンビークのモザールプロジェクト(ボーキサイト)がある。http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/ad/foryou/ad060112.html

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