2011/11/28

暮らしからみるセネガル経済~新興国パワー

セネガルの首都ダカールの人口は約3百万人。土地開発が進み、新しいビルがどんどん建つ、発展著しい大都会だ。この大都会に暮らしていると、この国の経済が色んな国、なんと言っても新興国と結びついていることを実感する。

旧宗主国フランスを含むEUとのつながりはやっぱり強い。EUはセネガルにとって、輸入の半分(23億ユーロ相当)、輸出の2(2.7億ユーロ相当)を頼る第一の貿易パートナーだ。
でも一歩街に出れば、新興国の存在感を肌で感じる。目抜き通りの露店には、セネガル女性が好みそうなド派手で安い衣類・靴・アクセサリーなどの中国製品が並ぶ。電化製品から100円ショップに売っていそうな小物まで、世界の工場・中国の製品は庶民の生活に溶け込んでいる。中国はセネガルにとって第二の輸入相手国だ(シェア9.1%、4億ユーロ相当)

同じアジアで言えば、韓国やインド製品の姿も目に付く。特にサムソンとLGの携帯電話や薄型テレビなどの家電は、一般的に質がよく、日本製品よりも価格が手ごろとなので中流家庭の味方だ。日本車やフランス車に混じって、現代(ヒュンダイ)KIAといった韓国メーカーの自動車の姿も良く見かける。一方、市内を走っている路線バスはインドのタタ製。タタ社といえば、最近世界一安いと言われる低価格自動車「ナノ」を開発した会社だ。

セネガルのお隣ギニアをはじめとする資源国では、ブラジル、中国、インドの鉱業会社が大きな投資契約をどんどん結んで、鉄鉱石などの資源開発に乗り出している。ここでも新興国のパワーはすごい。

それにしても、セネガルからの輸出の大半が第一次産品で、逆に輸入が機械・車や加工製品に偏っているのを見ると、ちょっと切なくなる。しかも、輸入額が輸出額の約2倍という貿易赤字。がんばれ「Made in Senegal」!

参考:

セネガルのごみ問題(3) 情報化とごみ問題

情報化はたくさんの恩恵をもたらす
ただ、情報化を支える通信・電子機器類―携帯電話、パソコンなど―は、やがては動かなくなり、廃棄物となる。

近年の情報化に伴い、発展途上国へ輸出される電子機器類の数は増加の一途をたどっている。セネガルも例外ではない。

人口約1300万人の国に、携帯電話ユーザーの数は840万人[1]。赤ちゃんからお年寄りまでざっと3分の2が携帯電話を持っていることになる。
情報化とはよほど縁が遠そうな田舎に行っても、かっこいい携帯をもち、ノートパソコンを広げる若者がいる。
「近い将来、世界中に20億台ものパソコンが出回り、その半分以上がセネガルを含む発展途上国に流れるようになる」とある専門家は指摘する[2]

廃棄物処理能力の欠如

パソコンなどの電子機器類や、冷蔵庫などの家電(電気機器類)廃棄物[3]には、水銀・鉛などの有害物質が含まれるため、特別な処理が必要だ。これらの廃棄物が一般ごみと一緒に捨てられたり放置されると、金属物質や有害物質が土壌と地下水に流れ出し、深刻な環境汚染の原因となる。
しかし、多くの発展途上国には、これらの廃棄物を安全に処理する技術もインフラも整っていないことが多い。

その結果、使えなくなった家電や電子機器類は、「修理屋」や「拾い屋」によって引き取られ、無造作に解体される。彼らは使えそうな部品や金属を取り出し、残りは一般ごみと一緒に放置する。銅など高く売れる金属を取り出すためには、周りのプラスティックごと燃やしてしまう…などといった、環境にも人体にも危険な「処理」方法は珍しくない。


「中古品」「寄付」という名の有害廃棄物

そんな中で、電子機器類が流入し続けるとどういうことになるか…。無視できないのが、「中古品」や「寄付」という名目で入ってくる有害廃棄物の存在だ。

ダカール市のオフィス街に隣接するルブス(Reubeuss)地区。在セネガル日本大使館のすぐ裏手にある、貧しい下町といわれるこの地区には、使えなくなった冷蔵庫やパソコンの「修理屋」がたくさんある。先日、この地区を歩いているとき、港からついたばかりの一台のコンテナを見かけた。中には古めかしい中古のパソコンがどっさり詰まっている。おそらくどこか先進国から輸入されたものだろうが、どうみても、使えそうには見えない。「分解してパーツにして売る」のだそうだが、当の本人はその危険を知っているのかどうか…[4]

セネガルのお隣・マリでは、毎年輸入されているパソコン約130万台の半分以上が中古品だという[5]。中古パソコンの寿命は長くても2年以下。有害廃棄物となるパソコンの数は恐ろしい勢いで増え続けている。


1992年に発効したバーゼル条約[6]では、有害廃棄物の輸出入を禁止している。しかし、実際にはごみ同然でも、中古品や寄付として申告されれば税関を通過してしまう[7]。中古品は、輸出する側にとっては仕入れ値のほとんどかからない、お得なビジネスであり、安価な製品を求める買い手側からの需要も高い。

また、先進国の多くの人々や団体が「善意」から、まだ使える中古のパソコンを集めては発展途上国に送っている。その善意が深刻な環境汚染に貢献しているとは思いもよらずに…。



[1] Agence Ecofin. « La première édition du Mobile Monday en Afrique francophone a été organisée le 27 juin 2011 à Dakar. » 29 Juin 2011
http://www.agenceecofin.com/m-banking/2906-365-senegal-un-premier-mobile-monday-sur-m-banking
[2] PressAfrik. « Gestion des E-déchets : bientôt une usine de recyclage au Sénégal ». 23 juillet 2009.
http://collectik.over-blog.com/article-34135934.html
[3] 電気電子機器廃棄物E-waste(Electronic waste)WEEE (Waste Electrical and Electronic Equipment)などと呼ばれる
[4]  たとえば、機能しなくなったパソコンを解体すれば、少なくとも21の有害な化学物質が含まれているという。
TRAORÉ, Paule Kadja. « Sénégal: Gestions des déchets électroniques - L'Ong Enda Ecopole affiche son inquiétude ». Walfadjiri. 24 Août 2011. http://fr.allafrica.com/stories/201108240400.html
[5] RFI. « Sénégal : déchets électroniques et informatiques en Afrique de l'Ouest ». 15 Juillet 2010.
http://www.rfi.fr/emission/20100715-senegal-dechets-electroniques-informatiques-afrique-ouest
[6] 国連環境計画UNEPによる国際条約。1989年に採択され、日本は1993年加盟。175カ国が加盟しているが、このうちアメリカ、アフガニスタン、ハイチが批准していないという。
[7] ガーナの例では、輸入される中古機器のうち、ほんの1割から2割しか正常に作動しないという。
ARRIBE, Bertrand. « La réduction de la fracture numérique et ses effets ». 31.08.2010.
http://cooperation-concept.net/?p=3210

2011/11/26

コートジボアール 資本投資家の慎重な復帰 Timide retour des capital-investisseurs

危機を脱出して間もないコートジボアール経済は未だ先行き不透明で、今年中に実現する投資案件は極めて少ない。
徐々に戻ってきている資本投資家たちは希望と不安を抱えている。Cauris Management社はCFAフラン圏に特化した資本投資企業で、コートジボアールは「地域経済の肺だ」と言う。そんな同社も危機前は35%に設定していた投資額の上限を、25%に引き下げた。
慎重さの一因となっているのは、投資先の経済活動が麻痺していることにある。Caurisが数年前に投資した流通大手のCDCIは資本だけで150万ユーロの損失。一方、Emerging Capital Partners (ECP)社が資本のマジョリティを保有するコートジボアール電力公社(CIE)は、政争に巻き込まれた結果、北部地方の電力カットするはめになった。投資家としては非常に微妙な状況だ。

危機が収束し、正常化に向かっていても「先行きは不透明で、この国を十分に知り尽くしていない資本投資家たちは非常に慎重だ」と、英国開発機構・CDGの責任者は分析する。

投資家たちがコートジボアール経済の回復を願っているのは、ナイジェリアを除く他の西アフリカ諸国に魅力的な投資先がないからだ。
セネガルは大きく期待されながらも、期待されていたほどには成長していない。ダカールを拠点に選んだAureos Capital社は、まだ2件の投資案件しか実現していない。「セネガル市場に切り込んで行くのは難しい。多くの企業が外資の傘下にあるか、レバノン系に仕切られており、彼らは自分たちの資本をオープンにしたがらない」。ガーナは好調で、2年間で3000万ユーロが投資された。それでも、危機前のコートジボアールには程遠い。20082009年で約1.5億ユーロがコートジボアール資本の企業もしくは同国を中心に活動している企業に投資された。
「コートジボアールは約20年間の資本投資経験がある成熟市場なのです」と投資家のパイオニアの一人は語る。「産業化の観点から言えば、西アフリカのどの国もまだ十分なレベルに達していないのです」。

*この記事は以下のJeune Afrique誌記事を日本語で要約したものです。
Source : MAURY, Frédéric. « Timide retour des capital-investisseurs ». Jeune Afrique 2637 (du 24 au 30 juillet 2011). p96.

セネガル ビジネス観光ハブとなるダカール Tourisme d’affaires : Dakar, au centre des congrès


ダカールは様々な国際会議や見本市をホストし、また、国際機関、企業、NGOなどの駐在地の拠点として西アフリカの中心都市を目指してきた。しかし、アビジャンが戻ってくることで、その地位に影響が出始める。

ダカールの高級ホテルは常に会議やセミナーの予約でいっぱいだ。この「ビジネス観光」産業の発展は目覚しく、まだまだ発展の余地があると言われる。飛行機でヨーロッパからほんの5時間、アメリカから7時間という好条件に位置し、また経済的・政治的安定を維持しているダカールは、国連機関や国際NGOなどの仏語圏アフリカにおける重要な拠点となっている。
「ほんの最近までアビジャン訪問は難しかったし、仏語圏の人々はナイジェリアには行きたがらない。対照的にセネガルは人気があって、会議の後に何日か観光していく人も多いんです」とイベント企画会社はコメントする。

期待に応えるにはキャパシティも必要となる。セネガル国際貿易センター(CICES)56000m2の広大な敷地を有し、2009年には100件を越える国際見本市とイベントを開催した。
一方、ホテルのキャパシティには限界がある。650席の大会議場と展示スペースを持ち、施設が充実している高級ホテルはMeridien President(顧客の9割がビジネス客)だけだ、と同イベント会社はいう。
ダカールでは2013年までに、現在ある7つの高級ホテル(4つ星、5つ星)に加え、3、4件の高級ホテルが建設中だ。

ダカールが重要拠点として認められるようになったのは間違いないが、ライバル都市に大差をつけるにはいたっていない。アビジャンが着々と復帰を進めるなか、もしセネガルが政情不安定になれば―ワッド大統領への不満は高まる一方だ―ダカールとアビジャンの一騎打ちに影響する。
「コートジボアールが安定すれば、アビジャンでのイベント開催を考えています。これによって新たな顧客も開拓できるようになるでしょう」(前出のイベント会社)Business is Business…

*この記事は以下のJeune Afrique誌記事を日本語で要約したものです。
Source : FONTAINE, Aurélie. « Tourisme d’affaires : Dakar, au centre des congrès ». Jeune Afrique 2637 (du 24 au 30 juillet 2011). p90-91.

セネガル ワッドと若者の危険 Wade et le péril jeune


大統領選が予定されている2012年2月の時点での有権者数は600万人と推計されている。しかし、現時点(2011年7月)で投票者登録をしているのは500万人しかいない。残りの100万人は、2007年の大統領選以降に成人した(18歳以上)者たちで、これらの若年層の票は選挙の命運を握ると見られている。

最近まで若年層の登録者数は極めて少なく、2010年12月の時点では1822歳人口のほんの12%だった。政党への不信感から、2012年に投票しようと思っていた若者はごく限られていたのだ。しかし、状況は変わってきている。

Y’en a marre運動(ラッパー歌手などが主体となって立ち上げた「もううんざりだ」を意味する運動)4月から若年層に投票者登録をするよう呼びかけている。「投票によって自分が運命かわることを若者に知ってもらう」のが目的だと言う。彼らの推計では、ここ数週間で30万人が登録手続きをおこなったという。

しかし、この数字は政府の発表とは大きな差がある(10.5万人)
野党勢力は、「政府・登録所が投票者登録を邪魔している」と批判している。登録に来た人々を何時間も待たせ、用紙の品切れ・登録に必要な身分証発行の機械が故障など言い訳をしているというのだ。そうこうしているうちに、登録期間は7月末で終わりを迎え、野党勢力は期間延長を求めている。

野党は、ワッドは若者たちを恐れているから投票者登録を妨害しているのだと批判する。彼らが自分に投票する可能性は極めて低いのだと、ワッドは知っているのだ。Y’en a marre運動の創始者の一人は言う。「僕にとって最初の選挙は2000年の大統領選で、変革を求めてワッドに投票した。そして2012年、同様に若者は変革を求めている。彼らの多くはワッド政権しか知らず、ワッドが約束を守ってこなかったことを知っているんだ。」

*この記事は以下のJeune Afrique誌記事を日本語で要約したものです。
Source : CARAYOL, Rémi. « Sénégal : Wade et le péril jeune ». Jeune Afrique 2637 (du 24 au 30 juillet 2011). p36-37.

2011/11/20

セネガルのごみ問題(2) プラスティックごみ

ビニール袋やペットボトルなどのプラスティックごみは、そのまま捨てられると、分解されるまでに400年以上かかるらしい。

それでも、何かと便利で値段も安いプラスティック製品は、生活の中にあふれている。
飲み物のペットボトル、マーガリンやヨーグルトの容器をはじめ、買い物をすれば、無料でビニール袋がついてくる。ちなみに、セネガルでは毎日1千万ものビニール袋が使われており、国内のごみの約4割がプラスティック素材に起因するものだという報告もある[1]

ダカール市だけ見ても、ごみの量は年間で40.6万トン[2]ということなので、一日あたり乗用車1000台分以上のごみが発生しているということになる。 

日本では高熱焼却やリサイクルの技術が発達しているが、セネガルには高度なごみ処理インフラがなく、大抵のごみは埋め立て(集積場に放置)されるか、有害物質を発しながら焼却処理されるのが一般的。そんな中でごみが増え続けると、、、深刻な環境汚染になる。

ダカール郊外のブブス(Mbeubeuss)ごみ集積場の周辺では、堆積したごみから流れだした有害物質による土壌と地下水の汚染、焼却されたごみの煙による大気汚染が問題視されている。周辺の病院では環境汚染が原因と見られる患者の例が後を絶たず、乳児の奇形も報告されているという[3]

ちなみに、この集積場では子供を含む1000人以上が「ごみの拾い屋」として働いているという。リサイクルできそうなプラスティック、金属、ガラスなどのごみを集めて売り、一日あたり500円から1500円を稼ぐ。プラスティックごみ1Kgの値段は75CFAフラン(12)だという[4]
分解されず、川岸に打ち寄せられたごみ。(提供:Quentin Didier)
ダカールのごみ集積場。
出典: http://www.parismatch.com/Grand-Prix-Photo-Reportage/2010/Photos/Decharges-d-Afrique-survivre-ou-vivre-Antannarivo-Dakar-Addis-Abeba/184180/


[1] 国連人間居住計画(UN-HABITAT)のセネガル担当者によるコメント。APS. « SENEGAL : 10 millions de sachets plastiques utilisés chaque jour ». 05 Octobre 2010.
[2] 公衆衛生・生活環境大臣によるコメント。これによるとプラスティックごみの割合は8%そこそこ。Agence de Presse Sénégalaise (APS). « Sénégal: Les déchets plastiques constituent "un péril environnemental", selon Khady Mbow ». 25 Mars 2011. [3] GÉRARDZ Julien. « Sénégal : l'enfer du quotidien des trieurs de déchets ». Le 25 Mai 2011.