2012/02/11

コートジボアール ワタラ政権その後 Politique : Et maintenant?


<これまでの経緯>
長年の政情不安・国内分裂状態に終止符を打つはずだった2010年の大統領選挙。928日に現職バグボ大統領(当時)とワタラ元首相との間で決選投票が行われた。122日、選挙管理委員会は僅差でワタラの勝利を発表。しかし翌日この開票結果を憲法院が無効とし、バグボを勝者と発表した。バグボは国際社会からの非難をよそに大統領の座にとどまり続けた。交渉では状況が打開できず、20112月に戦闘勃発。アビジャンでの戦闘を経て、411日バグボ夫妻が逮捕された。521日ワタラ大統領が正式に就任し、内閣発足。1211日議会総選挙実施。

2010年の大統領選に至までの経緯はここでは割愛しますが、この辺の政治駆け引きは岡村前大使 のブログに詳しいのでご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/zoge1

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ワタラ大統領は就任から9ヶ月たった現在、全ての事業の前線に立って陣頭指揮をとっている。201112月の総選挙で証明された大きすぎる存在感が、ひいては公共事業と和解をスピードダウンさせる恐れがある。

こんな小話がある。ある大臣が朝7時に出勤すると、まだオフィスの鍵が閉まっている。さあ大変、オフィスの電話が今にも鳴るのではないか。大統領は内閣のメンバーが寝坊せずに出勤してるか頻繁にチェックしているから。大臣はハラハラしながら鍵を持っているはずの門番を探す…。ワタラ政権にとって、いかにコミュニケーションが重要かということが表れているエピソードである。

ワタラ大統領は数々の大統領令や法令を発して、9ヶ月で国家体制を整えた。彼の緊急政策が水道・電気網と医療・社会インフラを復活させ、公務員は朝7時半には出勤するようになった。大統領自身は西アフリカ諸国・欧州・米国を訪問しては各国との関係を築き、財政支援を求めている。20202030年度開発計画には、コートジボアールのGDP2020年までに500億ドル(380億ユーロ)まで倍増させる野望がこめられている。この賭けに勝つには、大量の投資と、175億ユーロに上る国家開発計画予算の財源が必要だ。
野党はこの政治運営を非民主主義的だと批判している。(ワタラ派が多数を占める)議会での議論の不在、政治・軍事・ビジネスに影響力のある一部の人間がおいしい公共事業と権力を分け合っている構図…。

2000年以来はじめてとなった昨年12月の議会総選挙。ワタラの与党RDR255議席中127議席、連立与党PDCI77議席を獲得して多数派となり、大統領府の意向が通りやすくなった。20121月、ワタラは部下たちを激励すると共に、もっと事業をスピードアップさせるよう発破をかけた。目下のプライオリティーは若年層の雇用だ。大学は2012年度は工事のため学生を受け入れないことになっており、これが35歳以下の失業者600万人に加わる。社会不満はすぐにでも爆発しかねない。これが、ワタラ大統領が大型公共事業を急ぐ理由でもある。2012年の歳出は6200FCFA。「この予算はすべての人に職を与えるには足りないが、一般企業がリスクをとってでも若者を雇用していかなくてはならない」と官房の一人。その代わり政府は業者への支払いを迅速に行い、研修の再開、商業裁判所の設置、また中小企業をサポートすることでビジネス環境を整えていく、という。

もうひとつの大きな課題は治安回復だ。2011年末、元反乱軍(FN)はコートジボアール共和国軍(FRCI)の一員になった。しかし彼の一部の横暴は目に余るもので、痺れを切らしたワタラは、担当のソロ首相兼防衛相の手からこの件を引取り、自らが直接仕切ることにした。全ての参謀長を招集して、Zakaria Koné氏を新しい憲兵隊の長に指名。この憲兵隊は、頑固な元反乱軍を統率するための特別部隊である。この後には、2007年ワガドゥグ合意で約束された軍隊再編が待っている。

もしワタラが治安を回復し、雇用を創出することに成功すれば、バグボ派からも評価されるだろう。しかし、真の和解は遠い。対話・真実・和解委員会(CDVR)が設置されたもののバグボが国際刑事裁判所送りになったことが和解を難しくしている。FPI(コートジボアール愛国戦線、バグボ派)との対話は失敗に終わり、彼らは結局12月の議会総選挙をボイコットしてしまった。
ワタラが賭けに勝つためには、バグボ派の人間にも手を差し伸べる必要がある。政府や国営企業の代表には、今のところ、(支持に報いるために)ワタラ陣営の人間が任命される例が多い。一方、バグボ前政権の重要人物17人は未だに拘束状態にある。和解の一歩となるかもしれない彼らの裁判も進んでいない。2010年の選挙でバグボに投票したというアビジャン在住の若者は語る。「和解の準備は出来ている。でも、僕らが望むのは真実、そして両陣営に対する平等な裁きだ」。

*この記事は以下のJeune Afrique誌の記事を日本語で要約したものです。
Source : AIRAULT, Pascal. Politique : Et maintenant? Jeune Afrique 2665 du 5 au 11 février 2012. p62-64.

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