<これまでの経緯>
2月26日に大統領選挙を控えたセネガルでは、三期目を目指す現職ワッド大統領の立候補が非難を呼んでいる。2000年に初当選したワッドは、翌年自らが行った憲法改正で大統領の三選を禁止したにもかかわらず、85歳という高齢で三回目の立候補を表明した。大統領選候補者の資格を審議する憲法院は1月27日、ワッドの立候補を正当という決定を下した。一方歌手ユッスー・ンドゥールの立候補は却下された。17人の立候補者のうち14人の立候補が正当と判断され、各候補は2月5日から選挙キャンペーンに突入した。
2月26日の大統領選まで1ヶ月を切ったセネガルはワッドとその対立候補たちの混迷したレースに突入している。1月27日、憲法院の5人の審議官は全会一致でワッドの立候補を正当とする決断を下した。ワッドは2000年に初当選(任期7年)、2007年に再選(任期5年)している。2001年の憲法改正では大統領の三選を禁止しているが、憲法院はワッドの一期目はこれにはカウントされないと判断したようだ。当然ながら野党はこの憲法院の判断を強く批判。程なくして暴動に火がついた。
ワッドは2000年に当選した際、大統領の任期を二期までに制限することを誓い、2007年に再選した際には「もう再び立候補することはない。憲法でそう決められたから」と宣言していた。
高齢も問題だ。ワッド自身は「体力的にも精神的にも全く問題ない」と宣言しているが、毎朝4時に起きて朝の運動を欠かさず行い、夜遅くまで会議をはしごする姿はまさに「ポリティカル・アニマル」。特にここ2ヶ月のスケジュールは過密だ。(聖地である)トゥーバとティバワンを訪問して宗教界の取り込みを図り、地方での式典に参加し、事の成り行きに不安を抱く各国の外交官の面会に応じ…。「ワッドはダメだよ、もう85歳なんだから!」という国民からの批判は絶えないが、人間とは頑固なもの。ワッド陣営は国外からの批判に対しても、「民主主義は脅かされていない」「内政干渉はしないでくれ」と突っぱねている。
ワッド陣営は自らの優勢を知っているのだ。票を大きく左右すると見られる宗教界の指導者は中立を保ちながらも、怒りを爆発させる野党関係者に憲法院の決定を受け入れるように促している。ワッドにとって有利なのは、野党勢力が分裂しているという事実、そしてM23 (ワッドの立候補に反対する市民運動「6月23日運動」)の矛盾だ。
それまで一致団結してきた反ワッド勢力は、今ではばらばらになってしまった。極小政党は影響力のある候補者たちが非協力的だと主張し、有力候補を抱える大きめの野党は極小の「アナーキスト、暴徒」が選挙プロセスを邪魔しているという。Idrissa Seck, Macky Sall, Moustapha Niasse, Ousmane Tanor Diengなどの有力候補者たちは既に多額の資金を選挙活動に投入してきたので、それを犠牲にしたくないのだ。
過激化する候補者がいる一方で、国家の指導者としての穏便なイメージを保ちたい候補者もいる。「ワッドが決して立候補を取り下げないだろう。彼はそういう奴だ。だから今更『ワッドのいない選挙を』なんて息巻いても意味がない。我々は彼に対抗するすべはないんだ」と野党関係者の一人はため息を付く。
野党側はワッドが選挙に参加すれば投票は公正に行われず、結局はワッドが勝つことになると信じている。与党側はその可能性を強く否定しているが…。ワッド政権で外相を務めたが今は反ワッドに回っているGadio候補は、「『憲法クーデタ』の次にくる『選挙クーデタ』を回避するために我々は戦わなくてはならない。ワッドの選挙活動を妨害し、政権交代を迫らなければ」と主張する。
一方、M23の候補者は、「選挙前にワッドを退けるのは無理」と見る。過去、前ジウフ大統領は1988年と1993年の投票の後、野党の怒りを静めるために議会解散に踏み切ったことがある。そのときと同じような状況を作り出すために、国際世論に警告を発信し続け、投票後、(反対運動を盛り上げて)国家権力が機能しないようにもって行くしかない。「そうやって初めてワッドが身を退くという合意が出来る」と分析する。
大統領府によく出入りをしているというある人物は「ワッドはサプライズを用意している。選挙で勝利を収め、2、3年だけ任期をつとめた後に若い世代のリーダーへの禅譲を果たすというものだ。Macky Sallか、ダカール市長Khalifa Sallなど彼が一目置いている人物に」ともらす。確かにワッドは「(自分が始めた大事業の)工事を終わらせるのにまだ3年は必要だ」とあるインタビューでコメントしていた。
しかし、反対派にとって3年間は長すぎというのが本音だ。2月26日の選挙まですら待てないという人もいるのだから。
Source : CARAYOL, Rémi. Sénégal : Wade, envers et contre tout. Jeune Afrique 2665 du 5 au 11 février 2012. p32-34.
0 件のコメント:
コメントを投稿