大統領選の決選投票が予定通り3月25日に行われた。現職アブドゥライ・ワッド大統領(85歳)と、彼の元でキャリアを積み首相を務めた経験のあるマッキー・サール氏(50歳)の師弟対決となり、サール氏が65.8%の得票を得て4人目のセネガル共和国大統領に当選した。これに対しワッド氏の得票は34.2%だった。投票率は55%で第一回投票から微増した。
2月26日に行われた第一回投票では、ワッド氏35%、サール氏26%の得票率だった。第一回投票で落選した他の候補十数名は全てサール氏支持を表明していた。
投票日当日は大きな混乱はなく平和裏に投票が行われた。その日の夜から国営放送(RTS)等で開票速報が流れ、特にダカールの選挙区ではサール氏の圧倒的な優勢が伝えられた。21時半頃、同国営放送で、ワッド氏がサール氏に電話し勝利を祝福したことが伝えられ、政権交代が確実となった。ワッド氏が潔く敗北をみとめたことで、セネガルの民主主義の伝統が守られたといえる。(セネガルは独立以来一度もクーデタ・紛争を経験しておらず、常に民主主義的な選挙によって政権交代が行われてきた。)
4月2日にサール新大統領の就任式が行われた。
サール新大統領に対する国民の期待は大きいが、基礎食料品や燃料の価格安定、雇用問題、エネルギー問題など、限られた予算の中で取り組むべき課題が山積みだ。新大統領の手腕に注目が集まっている。
セネガル・コートジボアールをはじめとするアフリカの政治経済ニュース、社会問題などを紹介。特にアフリカ専門の仏語週刊誌『Jeune Afrique』の記事をピックアップして紹介しています。
2012/04/05
2012/03/26
セネガル 大統領選決選投票は無事終了、ワッド敗北を認める
セネガルでは3月25日、予定通りに大統領選の決選投票が行われた。第一回投票で上位2名だった現職のワッド大統領(85)と、彼の元でキャリアを積み首相を務めた経験のあるマッキー・サール氏(50)の師弟対決となった。
投票日当日は大きな混乱はなく、平和裏に投票が終了した。
投票率は未だ発表されていないが、50%程度にとどまった第一回投票よりは高いといわれている。
同日夜から国営放送(RTS)等で開票速報が流れ、特にダカールの選挙区ではマッキー・サール候補の圧倒的な優勢が伝えられた。
21時半頃、ワッド大統領がサール氏に電話し、勝利を祝福したという。
ワッド大統領はこれまであからさまに権力にしがみつく(そして息子に後を継がせる)姿勢を見せてきたため、あっさりと敗北を認めたのはうれしいサプライズであると同時に、セネガルの民主主義のレベルの高さを再び証明する出来事だといえる。
(ジウフ前大統領も2000年の大統領選で潔く敗北を認め、ワッドに政権交代をした。)
Source: Jeune Afrique/ RFI website
投票日当日は大きな混乱はなく、平和裏に投票が終了した。
投票率は未だ発表されていないが、50%程度にとどまった第一回投票よりは高いといわれている。
同日夜から国営放送(RTS)等で開票速報が流れ、特にダカールの選挙区ではマッキー・サール候補の圧倒的な優勢が伝えられた。
21時半頃、ワッド大統領がサール氏に電話し、勝利を祝福したという。
ワッド大統領はこれまであからさまに権力にしがみつく(そして息子に後を継がせる)姿勢を見せてきたため、あっさりと敗北を認めたのはうれしいサプライズであると同時に、セネガルの民主主義のレベルの高さを再び証明する出来事だといえる。
(ジウフ前大統領も2000年の大統領選で潔く敗北を認め、ワッドに政権交代をした。)
Source: Jeune Afrique/ RFI website
2012/03/01
セネガル 大統領選 第一回投票が平和裏に終了、決選投票確実
大統領選挙の第一回投票が予定通り2月26日に行われた。28日現在の開票結果(45選挙区中30選挙区の結果)によると、いずれの候補の得票も過半数に届かず、決選投票が行われることが確実となった。主な候補の得票数は以下の通り: (*Observateur誌・France24・RFI共同)
<これまでの経緯>
2000年に初当選し、翌年自らが行った憲法改正で大統領の三選を禁止したにもかかわらず、85歳という高齢で三期目へ向けた立候補を表明した。大統領選候補者の資格を審議する憲法院が1月27日、ワッドの立候補を正当という決定を下して以来、セネガルでは反ワッドのデモが頻発し、全国で数名の死亡者と多数の負傷者が出ていた。このような緊張した空気の中で迎えられた投票日当日は、懸念されたような大きな混乱はなく、平和裏に投票が行われた。
- アブドゥライ・ワッド大統領 36%
- マッキー・サール元首相 27%
- ムスタファ・ニアス元首相 14%
- O.タノー・ジェン社会党党首 11%
- イドリサ・セック元首相 8%
これにより、上位2名のワッド大統領(85歳)とマッキー・サール元首相(50歳)との間で決選投票が行われることが確実となった。マッキー・サールは他2名の元首相同様、ワッド政権下で首相を務めた経験があるが、2008年に反ワッドに転じた。落選した候補者たちは反ワッド色が強く、決選投票では野党票がマッキー・サールに集中する可能性が高い。正式な開票結果および決選投票の日程はまだ発表されていないが、決選投票は3月18日に行われるものと見られる。
<これまでの経緯>
2000年に初当選し、翌年自らが行った憲法改正で大統領の三選を禁止したにもかかわらず、85歳という高齢で三期目へ向けた立候補を表明した。大統領選候補者の資格を審議する憲法院が1月27日、ワッドの立候補を正当という決定を下して以来、セネガルでは反ワッドのデモが頻発し、全国で数名の死亡者と多数の負傷者が出ていた。このような緊張した空気の中で迎えられた投票日当日は、懸念されたような大きな混乱はなく、平和裏に投票が行われた。
2012/02/27
セネガル 大統領選投票日当日 Les Sénégalais ont commencé à voter dans le calm
果たして決選投票はあり得るか?今日2月26日に第一回投票が行われているセネガル大統領選挙では、5百万人の有権者が現職ワッド大統領を含む14人の候補者から選んで投票を行う。仮にワッド大統領が望み通り第一回投票で(過半数の得票を得て)選出された場合、今後7年間の続投が決まる。大統領側は、この投票が法に則って行われると約束している。
既に12年間大統領を務める現職アブドゥライ・ワッドは、第一回投票で勝利して三期目の任期を勝ち取る自信を見せているが、国際選挙オブザーバーは懐疑的だ。現在85歳のワッドにとって今回1978年から通算7回目の大統領選立候補(うち2回当選)となる。
金曜日深夜に終了した選挙活動期間は「ワッドか、反ワッドか」に終始したといえる。この一ヶ月で6人の死亡者と多数の負傷者が出ており、セネガルは緊迫した空気の中で、静かに投票日を迎えている。
憲法院は先月末、大統領の任期を2期までに制限した2001年憲法改正を微妙に解釈することによって、ワッドの立候補にゴーサインを与えた。この決定は、特に「6月23日運動(通称M23)」をはじめとする大規模な抗議活動を巻き起こした。M23は、昨年6月23日にワッド大統領が提出した憲法改正案(過半数ではなく25%の得票で大統領に当選できるようにするもの)に反対して起こった大規模な市民運動に由来し、野党勢力と市民団体を束ねているグループだ。
しかしM23の動員力は足りず、ワッドの立候補申請、憲法院による受諾、そして選挙活動を許してしまった。野党の候補者たちは一丸となって反ワッドの戦いを行うはずだったが、結局バラバラに選挙活動を行うことになり、最後までM23と足並みをそろえたのはたった3人だった。
土曜日、アフリカ連合(AU)とECOWASのオブザーバーを代表するオバサンジョ元ナイジェリア大統領は、ダカールでの4日間にわたる与野党との交渉の結果を発表した。
オバサンジョは、与党と野党の和解は得られなかったとし「この交渉が遅すぎたものであっても、国がカオスに陥るのはさけなければならなかった」と交渉の意義を正当化した。
オバサンジョが与野党に対して行った提案は、ワッドが勝利した場合に2年間だけ任期を与えるというものであったが、受け入れられることはなかった。M23は代替案として、投票を延期し9ヶ月間の移行期間を設けた上で、ワッド抜きで選挙を行うことを提案した。しかし、これらの提案は「再選すれば任期は7年間」と断言するワッド陣営によってことごとく拒否された。
野党候補者たちは支持者に対し、投票をボイコットせず、ワッドを無視して投票に出かけるよう呼びかけており、(ワッドが勝者となれば)開票結果を受け入れないと宣言している。大統領側は、この投票が法に則り、他の選挙と同様に通常通り行われると主張している。
野党候補の中には、選挙によってワッドを追い出せると見るものもいる。つまり、(第一回投票でワッドが過半数を得られず)決選投票が行われれば、反ワッド勢力を結集し、対立候補を勝利に導くということだ。
バンキムン国連事務総長はセネガルの状況を「危惧」しており、AUもすべての政治関係者に対して冷静を呼びかけている。仏ジュペ外相は「セネガルは民主主義国家であり、長く民主主義の伝統をもっている。(選挙の)結果がどうであれ、暴力には強く反対する。集会の自由、表現の自由は民主主義の根本だ。ただし非暴力が原則」とコメントしている。
以上、Radio France Internationaleニュースより和文要約。
2012/02/23
セネガル 大統領選間近・有権者の声 Paroles de Sénégalais
2月26日に迫ったセネガル大統領選。もうすぐ86歳になる現職ワッド大統領が3回目の任期を目指して立候補を表明したことで、反大統領運動が激化。国内の緊張が高まっている。以下はJeune Afrique誌2667号に掲載された選挙特集から有権者の声を抜粋したもの。
56歳男性・大学教授(歴史学)
セネガルの憲法に従えば、ワッドは大統領に立候補できないし、してはいけないことになっている。彼が自らの立候補を押し通せば、暴力沙汰が起こる恐れがある。セネガル人は他の人類と同じで、正義が抑圧される状況に置かれれば、断固抵抗するだろう。
31歳女性・自営業(飲食)
前回の選挙と同じくワッドに再度投票するつもりだ。彼は国を発展させるための知恵を持っていて、実際2000年に彼が大統領になってから変化が見られた。残念なことに一部のグループが暴力をあおっているけれど、誰に投票するかは個人的な問題なのだから、そっとしておいてほしい。
51歳男性・警察官
この不景気の中、ワッドは過去の大統領に比べればよくやってきた。新しい道路ができ、交通事情は改善した。セネガル人は平和を望んでいる。だから、投票が民主的に行われることを願っている。警察官としては暴力沙汰が起こらないことを祈っている。平和が保たれれば余計な仕事をする必要もなく、みんながハッピーだからね。
18歳女性・学生
ワッドには投票しない。あんな年寄りにはもう国を治める能力はない。息子に全てを与え、無駄な事業に何百億も費やす大統領はもううんざり。近隣国の例を見ると暴力がいかに恐ろしいかがわかる。大統領が無理に居座ったために、なんの理由もなく一家全員が殺されたりしている。
29歳男性・輸出入業
ワッドに投票するつもりだ。なぜなら野党に彼以上のことはできないから。現大統領はセネガルに資金を呼び込むすべを知っている。彼は今でも支持されているからきっと勝つだろう。暴力のリスクについては心配していない。宗教界(ムリッド派)は政治的発言をしないけれど、もし問題が起きれば人々は冷静を求める宗教界の呼びかけに従うだろう。
56歳男性・大学教授(歴史学)
セネガルの憲法に従えば、ワッドは大統領に立候補できないし、してはいけないことになっている。彼が自らの立候補を押し通せば、暴力沙汰が起こる恐れがある。セネガル人は他の人類と同じで、正義が抑圧される状況に置かれれば、断固抵抗するだろう。
31歳女性・自営業(飲食)
前回の選挙と同じくワッドに再度投票するつもりだ。彼は国を発展させるための知恵を持っていて、実際2000年に彼が大統領になってから変化が見られた。残念なことに一部のグループが暴力をあおっているけれど、誰に投票するかは個人的な問題なのだから、そっとしておいてほしい。
51歳男性・警察官
この不景気の中、ワッドは過去の大統領に比べればよくやってきた。新しい道路ができ、交通事情は改善した。セネガル人は平和を望んでいる。だから、投票が民主的に行われることを願っている。警察官としては暴力沙汰が起こらないことを祈っている。平和が保たれれば余計な仕事をする必要もなく、みんながハッピーだからね。
18歳女性・学生
ワッドには投票しない。あんな年寄りにはもう国を治める能力はない。息子に全てを与え、無駄な事業に何百億も費やす大統領はもううんざり。近隣国の例を見ると暴力がいかに恐ろしいかがわかる。大統領が無理に居座ったために、なんの理由もなく一家全員が殺されたりしている。
29歳男性・輸出入業
ワッドに投票するつもりだ。なぜなら野党に彼以上のことはできないから。現大統領はセネガルに資金を呼び込むすべを知っている。彼は今でも支持されているからきっと勝つだろう。暴力のリスクについては心配していない。宗教界(ムリッド派)は政治的発言をしないけれど、もし問題が起きれば人々は冷静を求める宗教界の呼びかけに従うだろう。
2012/02/10
セネガル ワッド、すべての反対を押し切ってでも Wade, envers et contre tout
<これまでの経緯>
2月26日に大統領選挙を控えたセネガルでは、三期目を目指す現職ワッド大統領の立候補が非難を呼んでいる。2000年に初当選したワッドは、翌年自らが行った憲法改正で大統領の三選を禁止したにもかかわらず、85歳という高齢で三回目の立候補を表明した。大統領選候補者の資格を審議する憲法院は1月27日、ワッドの立候補を正当という決定を下した。一方歌手ユッスー・ンドゥールの立候補は却下された。17人の立候補者のうち14人の立候補が正当と判断され、各候補は2月5日から選挙キャンペーンに突入した。
2月26日の大統領選まで1ヶ月を切ったセネガルはワッドとその対立候補たちの混迷したレースに突入している。1月27日、憲法院の5人の審議官は全会一致でワッドの立候補を正当とする決断を下した。ワッドは2000年に初当選(任期7年)、2007年に再選(任期5年)している。2001年の憲法改正では大統領の三選を禁止しているが、憲法院はワッドの一期目はこれにはカウントされないと判断したようだ。当然ながら野党はこの憲法院の判断を強く批判。程なくして暴動に火がついた。
ワッドは2000年に当選した際、大統領の任期を二期までに制限することを誓い、2007年に再選した際には「もう再び立候補することはない。憲法でそう決められたから」と宣言していた。
高齢も問題だ。ワッド自身は「体力的にも精神的にも全く問題ない」と宣言しているが、毎朝4時に起きて朝の運動を欠かさず行い、夜遅くまで会議をはしごする姿はまさに「ポリティカル・アニマル」。特にここ2ヶ月のスケジュールは過密だ。(聖地である)トゥーバとティバワンを訪問して宗教界の取り込みを図り、地方での式典に参加し、事の成り行きに不安を抱く各国の外交官の面会に応じ…。「ワッドはダメだよ、もう85歳なんだから!」という国民からの批判は絶えないが、人間とは頑固なもの。ワッド陣営は国外からの批判に対しても、「民主主義は脅かされていない」「内政干渉はしないでくれ」と突っぱねている。
ワッド陣営は自らの優勢を知っているのだ。票を大きく左右すると見られる宗教界の指導者は中立を保ちながらも、怒りを爆発させる野党関係者に憲法院の決定を受け入れるように促している。ワッドにとって有利なのは、野党勢力が分裂しているという事実、そしてM23 (ワッドの立候補に反対する市民運動「6月23日運動」)の矛盾だ。
それまで一致団結してきた反ワッド勢力は、今ではばらばらになってしまった。極小政党は影響力のある候補者たちが非協力的だと主張し、有力候補を抱える大きめの野党は極小の「アナーキスト、暴徒」が選挙プロセスを邪魔しているという。Idrissa Seck, Macky Sall, Moustapha Niasse, Ousmane Tanor Diengなどの有力候補者たちは既に多額の資金を選挙活動に投入してきたので、それを犠牲にしたくないのだ。
過激化する候補者がいる一方で、国家の指導者としての穏便なイメージを保ちたい候補者もいる。「ワッドが決して立候補を取り下げないだろう。彼はそういう奴だ。だから今更『ワッドのいない選挙を』なんて息巻いても意味がない。我々は彼に対抗するすべはないんだ」と野党関係者の一人はため息を付く。
野党側はワッドが選挙に参加すれば投票は公正に行われず、結局はワッドが勝つことになると信じている。与党側はその可能性を強く否定しているが…。ワッド政権で外相を務めたが今は反ワッドに回っているGadio候補は、「『憲法クーデタ』の次にくる『選挙クーデタ』を回避するために我々は戦わなくてはならない。ワッドの選挙活動を妨害し、政権交代を迫らなければ」と主張する。
一方、M23の候補者は、「選挙前にワッドを退けるのは無理」と見る。過去、前ジウフ大統領は1988年と1993年の投票の後、野党の怒りを静めるために議会解散に踏み切ったことがある。そのときと同じような状況を作り出すために、国際世論に警告を発信し続け、投票後、(反対運動を盛り上げて)国家権力が機能しないようにもって行くしかない。「そうやって初めてワッドが身を退くという合意が出来る」と分析する。
大統領府によく出入りをしているというある人物は「ワッドはサプライズを用意している。選挙で勝利を収め、2、3年だけ任期をつとめた後に若い世代のリーダーへの禅譲を果たすというものだ。Macky Sallか、ダカール市長Khalifa Sallなど彼が一目置いている人物に」ともらす。確かにワッドは「(自分が始めた大事業の)工事を終わらせるのにまだ3年は必要だ」とあるインタビューでコメントしていた。
しかし、反対派にとって3年間は長すぎというのが本音だ。2月26日の選挙まですら待てないという人もいるのだから。
Source : CARAYOL, Rémi. Sénégal : Wade, envers et contre tout. Jeune Afrique 2665 du 5 au 11 février 2012. p32-34.
2012/01/21
セネガル ユッス・ンドゥール、波乱の大統領選出馬へ Youssou Ndour Dans la fosse aux lions
スター歌手のユッス・ンドゥール(Youssou Ndour)が2012年のセネガル大統領選挙に出馬するというニュースは、かつてないほどアフリカと欧米のメディアを騒がせた。2012年の年明け早々の彼の立候補はワッド大統領派からも野党側からも良く思われていない。「歌手のくせに」との批判に対し、彼は「確かに自分は高等教育を受けていないが、大統領はポストでしかなく、職業ではない」反論している。
52歳のユッス・ンドゥールは世界的に売れているスター歌手だが、歌手業よりも「国に尽くすことはもっと重要。人々が変化を求めているときにじっとしてはいられない」と熱意を語る。彼は、日刊紙Observateur、ラジオ局RFMとテレビ局TFMを有し、セネガルでも有数の資産家としても知られる。
彼は選挙に勝てるか?政治評論家は悲観的だ。「決選投票で他の候補の支持に回れば支持基盤拡大に大きく貢献できるだろうが、彼自身が大統領に当選するというのはきわめて難しいだろう」。彼のアピールポイントは、自らの資産の多くをセネガルに投資してきたこと、貧しい家庭に生まれ育ち、自分の手で成功を掴み取った男というイメージだが、彼には政治経験もなければ、彼を支えるブレーン集団もいない。グリオの出身というのもハンディだ。
また彼のファンが必ず彼に投票するかというのは別問題だ。ハイチでは歌手のミシェル・マーティリが大統領に当選したが、セネガルとハイチは歴史的にも大きく異なる。学歴信仰が根強く、「古くから政治の歴史をもち政党が深く根付いている」(政治評論家) セネガルにおいては、貧しい家庭出身というのは必ずしもアピールポイントとはいえないのだ。
Rémi CARAYOL. Youssou Ndour Dans la fosse aux lions. Jeune Afrique 2661 (du 8 au 14 janvier 2012). p12.
セネガル 経済政策:成績は「可」 Économie : mention passable
事業の方向性は正しいのだが、ロジスティックと財源がついていかないというのがワッド流にありがちの欠点だ。結果として、事業は不完全に終わってしまう。大統領選を控えた有権者の関心は、果たしてそのワッド流を続けるべきかどうか、だ。
誰のためのインフラか
高速道路、新しい国際空港、コルニッシュ通り…ダカールの工事は終わることがない。これらのプロジェクトだけでも10億ユーロの予算がかかっているが、ある会計事務所は「他で見られる工事よりも割高」だと評価する。そしてこれらの事業がダカール市内のみの交通事情しか考えていないのであれば、優先順位のつけ方が疑問視されるのは当然だ。実際、人口過密にあえぐ郊外地域はこれらの事業の恩恵をほとんど受けていない。入札の透明性にも疑問符が付く。
ワッドの事業
国民の6割が従事している農業は国民全体の食糧をまかないきれておらず、食糧の輸入が貿易赤字を悪化させている(GDPの-16.5%)。ワッドはこの問題に着手する熱意を見せて2006年、農業プログラムに6000万ドルをつぎ込んが、結果は出ず、プログラムは忘れ去られた。2008年には、2012年までに食糧自給率100%を目指す別の食糧計画(Goana)が発表され、5.2億ユーロがつぎ込まれたが、4年後の今でもセネガルは米の5分の4を輸入に頼っている。政府の見解では、国内の穀物生産は倍増したというが…。「ワッドの目標は野望的すぎた」とMacky Sall大統領候補に近い経済学者Moubarack Lo氏は分析する。「食料自給率100%は達成できる可能性はあるが、どんなに早くとも2020年以降だろう」。
一方、最近の目玉事業Plan Takkalは電力供給建て直しに貢献した。10億ユーロの大事業はダカール市内の電力供給を確保し、今週には韓国Kepcoによる新発電所建設の契約がサインされた。
国営企業の民営化
セネガル化学産業(ICS)はインドのIffco社に、Sonacos社(Suneor、食用油)はAdvens社に、石油精製公社(SAR)はサウジのBinladinグループにそれぞれ買収され、ワッドはしばしばこれらの国営企業を安値で売り払ったと批判されている。「これらの民営化は透明性と管理に欠けている」と関係者。
Sonacoは民営化されたのに生産は非効率的なままで経営が改善されていない。ICSは買収以降、生産した化学肥料のほとんどがインドに売られ、国内の需要に回ってこなくなった。一方、民営化の成功例として知られるのは1990年代に民営化された電話会社のSonatelで、いまやサブサハラアフリカを代表する優良企業といわれている。
財政の穴
セネガルの財政について、「健全な年もあったが、それ以外は壊滅的だ」と前出の経済学者はまとめる。政府の歳出は過去12年間でGDPの20%から28%へ増加した。「GDPと貧困率は実質的に停滞しているので、歳出が増えたにもかかわらず、歳出が有効活用されてこなかった」。IMFは何度も警鐘を鳴らしてきたものの、最近は「国家歳出の管理は改善されてきている」とコメントしている。
*この記事は以下の『Jeune Afrique』誌の記事を日本語で要約したものです。
PAURON Michael. Économie : mention passable. Jeune Afrique du 15 au 21 janvier 2012. p30-31.
セネガル 外交政策:国境なき大統領 Président sans frontières
ワッドは国外でもワッド流を貫いてきた。外交の繊細さなど意に介する風もない。時には勇敢と思われる行動をとってきたが、大体の場合は思慮の足りない無謀に終わっている。
2002年、クーデタ後のコートジボアールでは反乱軍のソロを支持し、2010年の大統領選前にはワタラ支持をあからさまに表明してバグボ(当時大統領)の怒りを買った。
「いつも民主主義のお手本を見せたがり、自分ひとりで動きたがり、それが問題をさらにややこしくする」というのがワッドの欠点だと西アフリカの外交官は分析する。ギニア、マダガスカル、ニジェールへの介入がその例だ。
2008年12月のギニアのクーデタで、ワッドはいち早くダディス・カマラ大尉の軍事政権を支持する(ダディスはワッドを父と呼び慕っていた)。しかし程なくして2009年9月にその軍事政権による虐殺事件が起こり150人以上の一般市民が犠牲になった。結果としてワッドは面子を失い、「ライバル」であるコンパオレ・ブルキナ大統領が2010年ギニア大統領選の調停役の座をさらった。
それでも、旧宗主国フランスの機嫌をあまり損ねることなく、アメリカ、インド、中国、イラン、湾岸諸国などとの新しい外交関係を構築してくることができたのは、この「国家主権外交」の成功の証といえる。しかし、ノーベル平和賞をとりたいなどという行き過ぎた野望(ウィキリークスに流れたアメリカ外交官のコメント)が空回りすることは少なくない。ワッドは2011年、アフリカの国家元首として初めてリビアの反カダフィ政権への支持を表明し、ベンガジを訪問した。欧米に協調して反カダフィの姿勢を示すことによって、欧米から25%の得票で大統領に当選できるという憲法改正案への支持を得たかったのでは、とセネガル政界の関係者は邪推する。もしそれが本当ならば、とんだ計算違いだが…。
*この記事は以下の『Jeune Afrique』誌の記事を日本語で要約したものです。
PERDRIX Philippe. Président sans frontières. Jeune Afrique du 15 au 21 janvier 2012. p28-29.
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