2011/11/28

セネガルのごみ問題(3) 情報化とごみ問題

情報化はたくさんの恩恵をもたらす
ただ、情報化を支える通信・電子機器類―携帯電話、パソコンなど―は、やがては動かなくなり、廃棄物となる。

近年の情報化に伴い、発展途上国へ輸出される電子機器類の数は増加の一途をたどっている。セネガルも例外ではない。

人口約1300万人の国に、携帯電話ユーザーの数は840万人[1]。赤ちゃんからお年寄りまでざっと3分の2が携帯電話を持っていることになる。
情報化とはよほど縁が遠そうな田舎に行っても、かっこいい携帯をもち、ノートパソコンを広げる若者がいる。
「近い将来、世界中に20億台ものパソコンが出回り、その半分以上がセネガルを含む発展途上国に流れるようになる」とある専門家は指摘する[2]

廃棄物処理能力の欠如

パソコンなどの電子機器類や、冷蔵庫などの家電(電気機器類)廃棄物[3]には、水銀・鉛などの有害物質が含まれるため、特別な処理が必要だ。これらの廃棄物が一般ごみと一緒に捨てられたり放置されると、金属物質や有害物質が土壌と地下水に流れ出し、深刻な環境汚染の原因となる。
しかし、多くの発展途上国には、これらの廃棄物を安全に処理する技術もインフラも整っていないことが多い。

その結果、使えなくなった家電や電子機器類は、「修理屋」や「拾い屋」によって引き取られ、無造作に解体される。彼らは使えそうな部品や金属を取り出し、残りは一般ごみと一緒に放置する。銅など高く売れる金属を取り出すためには、周りのプラスティックごと燃やしてしまう…などといった、環境にも人体にも危険な「処理」方法は珍しくない。


「中古品」「寄付」という名の有害廃棄物

そんな中で、電子機器類が流入し続けるとどういうことになるか…。無視できないのが、「中古品」や「寄付」という名目で入ってくる有害廃棄物の存在だ。

ダカール市のオフィス街に隣接するルブス(Reubeuss)地区。在セネガル日本大使館のすぐ裏手にある、貧しい下町といわれるこの地区には、使えなくなった冷蔵庫やパソコンの「修理屋」がたくさんある。先日、この地区を歩いているとき、港からついたばかりの一台のコンテナを見かけた。中には古めかしい中古のパソコンがどっさり詰まっている。おそらくどこか先進国から輸入されたものだろうが、どうみても、使えそうには見えない。「分解してパーツにして売る」のだそうだが、当の本人はその危険を知っているのかどうか…[4]

セネガルのお隣・マリでは、毎年輸入されているパソコン約130万台の半分以上が中古品だという[5]。中古パソコンの寿命は長くても2年以下。有害廃棄物となるパソコンの数は恐ろしい勢いで増え続けている。


1992年に発効したバーゼル条約[6]では、有害廃棄物の輸出入を禁止している。しかし、実際にはごみ同然でも、中古品や寄付として申告されれば税関を通過してしまう[7]。中古品は、輸出する側にとっては仕入れ値のほとんどかからない、お得なビジネスであり、安価な製品を求める買い手側からの需要も高い。

また、先進国の多くの人々や団体が「善意」から、まだ使える中古のパソコンを集めては発展途上国に送っている。その善意が深刻な環境汚染に貢献しているとは思いもよらずに…。



[1] Agence Ecofin. « La première édition du Mobile Monday en Afrique francophone a été organisée le 27 juin 2011 à Dakar. » 29 Juin 2011
http://www.agenceecofin.com/m-banking/2906-365-senegal-un-premier-mobile-monday-sur-m-banking
[2] PressAfrik. « Gestion des E-déchets : bientôt une usine de recyclage au Sénégal ». 23 juillet 2009.
http://collectik.over-blog.com/article-34135934.html
[3] 電気電子機器廃棄物E-waste(Electronic waste)WEEE (Waste Electrical and Electronic Equipment)などと呼ばれる
[4]  たとえば、機能しなくなったパソコンを解体すれば、少なくとも21の有害な化学物質が含まれているという。
TRAORÉ, Paule Kadja. « Sénégal: Gestions des déchets électroniques - L'Ong Enda Ecopole affiche son inquiétude ». Walfadjiri. 24 Août 2011. http://fr.allafrica.com/stories/201108240400.html
[5] RFI. « Sénégal : déchets électroniques et informatiques en Afrique de l'Ouest ». 15 Juillet 2010.
http://www.rfi.fr/emission/20100715-senegal-dechets-electroniques-informatiques-afrique-ouest
[6] 国連環境計画UNEPによる国際条約。1989年に採択され、日本は1993年加盟。175カ国が加盟しているが、このうちアメリカ、アフガニスタン、ハイチが批准していないという。
[7] ガーナの例では、輸入される中古機器のうち、ほんの1割から2割しか正常に作動しないという。
ARRIBE, Bertrand. « La réduction de la fracture numérique et ses effets ». 31.08.2010.
http://cooperation-concept.net/?p=3210

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