スター歌手のユッス・ンドゥール(Youssou Ndour)が2012年のセネガル大統領選挙に出馬するというニュースは、かつてないほどアフリカと欧米のメディアを騒がせた。2012年の年明け早々の彼の立候補はワッド大統領派からも野党側からも良く思われていない。「歌手のくせに」との批判に対し、彼は「確かに自分は高等教育を受けていないが、大統領はポストでしかなく、職業ではない」反論している。
52歳のユッス・ンドゥールは世界的に売れているスター歌手だが、歌手業よりも「国に尽くすことはもっと重要。人々が変化を求めているときにじっとしてはいられない」と熱意を語る。彼は、日刊紙Observateur、ラジオ局RFMとテレビ局TFMを有し、セネガルでも有数の資産家としても知られる。
彼は選挙に勝てるか?政治評論家は悲観的だ。「決選投票で他の候補の支持に回れば支持基盤拡大に大きく貢献できるだろうが、彼自身が大統領に当選するというのはきわめて難しいだろう」。彼のアピールポイントは、自らの資産の多くをセネガルに投資してきたこと、貧しい家庭に生まれ育ち、自分の手で成功を掴み取った男というイメージだが、彼には政治経験もなければ、彼を支えるブレーン集団もいない。グリオの出身というのもハンディだ。
また彼のファンが必ず彼に投票するかというのは別問題だ。ハイチでは歌手のミシェル・マーティリが大統領に当選したが、セネガルとハイチは歴史的にも大きく異なる。学歴信仰が根強く、「古くから政治の歴史をもち政党が深く根付いている」(政治評論家) セネガルにおいては、貧しい家庭出身というのは必ずしもアピールポイントとはいえないのだ。
Rémi CARAYOL. Youssou Ndour Dans la fosse aux lions. Jeune Afrique 2661 (du 8 au 14 janvier 2012). p12.